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たまにはゆっくりしようよ、とカケルさんに声をかけられて、レッスン後に喫茶店に来た。
僕はコーヒー、カケルさんは紅茶。
いつも練習後はタイガくんと一緒だからハンバーガーしか食べない。だからこそいつもと違っていいかな、なんて。

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「シンちゅわ~ん、コーヒーなんて飲めるの~?」
「え?僕コーヒーは水と同じでがぶ飲みできる飲み物だと思ってるんですけど…。」
「…、まさか水と同じと言われるとは思わなかったよ…。いや、俺飲めないから。」
「あれ?そうなんです?ほら、コーヒーにも酸味が強いのと苦味が強いのとあって。僕は酸味がある方が好きです。」
「え…全部苦くない…?シンちゃん大丈夫…?」
「いや、普通に酸味と苦味は違うものですけど。」
「…はー、うん。わからない…わからないなぁ…。」
「ま、カケルさんは紅茶で、僕はコーヒーで。カケルさんが直接飲むわけじゃないですしいいじゃないですか。」
「まさかそう言い返されるとは思ってもなかった…。」
「…そうですか?」

そうして二人して一息つくためにそれぞれコーヒーと紅茶を飲む。
僕が普通にがぶ飲みしてるとやっぱり怪訝な顔をして眺めている。

「本当に飲めるんだね…。尊敬しちゃう…。」
「えぇ…そこまでですか…。」

困惑しながらも様々な話題をしつつ、最終的にタイガくんと一緒にいる時間が最近長いからか、彼の話題になる。

「そういえばシンちゅわんタイガきゅんとよく一緒にいるけど面白い話題ないのん?」
「タイガくんとの話題…、そうですね。ポテシェイとかナゲッシェイとか…。」
「…ぽてしぇいになげっしぇい?」

ハテナを浮かべるカケルさんに説明をする、と。

「タイガくん、シェイクにポテトやナゲット突っ込むんですよ…。」
「シェイク?あー!それでシェイ?ナゲットならシェイクに突っ込んだことあるけど美味しかったよ?」
「…は?え?なんで食べたことあるんですか…っていうか、カケルさんって意外と舌、庶民と同じですよね。」

困惑した顔でついツッコミをいれてしまう。カケルさんがお金持ちってたまに信じられなくなる瞬間があるんだ。それがおもに味覚系の話。いやだってあまりにも庶民派過ぎて、ツッコミをせざるを得ない。

「それ言っちゃう?いや、昔ね、ナゲットのソースが前より少なくなって足りなくて突っ込んでみたのよ。で、普通に美味しかった覚えがあるよ、うん。」
「なんで突っ込んじゃったんですか。」
「目の前にあったから?」
「はぁ…。」

そうして僕は首をかしげる。僕の味覚が変なのだろうか…?いや、でもやっぱり何か変な味というか。僕には無理だと思う。
そしてカケルさんに怪訝な顔をされながら、僕も怪訝な顔をしながらコーヒーを飲み干すのだった。

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