うららかたいむ。
ルヰside
僕のために用意してくれた、陽の当たる一室。太陽の光が苦手だと言った彼が、僕が少しでも居心地が良いように、と拵えてくれた部屋だ。もちろん、僕自身もお気に入りだったりする。
「んー…、シンは会議中だし…、暇だな…。」
いつもならばこの時間は一緒に本を読んだり、それからお互いの好きなところを話したりとかしながら過ごしている。…まぁ、種族さえ考えなければ普通に恋人同士がやることと言えるだろう。だけれど。目の前に光が膨らむ。久々に見たその眩しさに嫌な予感を覚える。
「ここに囚われていましたか。…さ、ルヰ。帰りましょう。悪魔に囚われているなんて…、何があったのです?」
「…仁先生。」
「なにかやましいことでも?…君に限ってないでしょう?」
「…僕は、僕の意思でここにいます。帰ってください。彼が、あなたを殺す前に。」
「はぁ?何を言ってるのです?私は国の中でも相当の腕利きです。殺されるはずが無いでしょう。」
「…先生は、恋人を目の前でさらわれたとして、怒らないわけない、と?」
「だから、そのような世迷言をあなたは信じてるのですか?」
「…ここ数ヶ月彼と過ごしていて、きっちり愛をもらってます。それが嘘であるなんて、そんなはずはない…!」
そうして僕は怒った先生に顔を平手打ちされる。とても乾いたぱちん、という音だ。
あまりの痛みに頬を押さえる。
「さぁ、わかったら帰りますよ。」
「い、やだ…!」
「なに?」
そのとき、がちゃ、という音が響く。それと共に鬼の形相の彼…シンが部屋へと入ってくる。
「ふんっ、こんな奴と生活をしていたんですか。まぁいい、倒して差し上げましょう。」
「…かえして、かえしてよ。僕の、大切な、恋人を…!」
そうして普段は温和な顔を歪めて、目を赤く光らせる。怒りのままに相棒の鎌を呼び出したのがわかった。ただ、僕が囚われているのが分かってるのかそれ以上のアクションはしない。
「はなして…!はなして…!せっかく見つからないように逃げたのに…!なんで、なんで見つけるの?!」
「ルヰくんを、かえせ…!その汚い手を離せ…!」
「汚いのは君という悪魔の方では?はんっ、そんなことも分からないとは…、流石と言ったところでしょうか。」
「っるさい!ああああああああっ!」
そうしてシンの周りに急激に闇が集まる。それがはれたとき、いつもの彼と違う、本当に「悪魔」と言うべきモノがそこにいた。
「ルヰくんに、この姿は見せたくなかったけど、仕方が無いよね。…そこの天使を殺さないと気が済まない。」
「シン…!せめて、せめて強制送還くらいに…!」
「…、ルヰくん。じゃあ、そいつがルヰくんを解放してくれるなら考えるよ。」
「ふんっ、ルヰの言葉には聞く耳を持つと。」
「本当はあんたを滅多打ちにしないと気が済まないけどね。嫌われたくないし。」
「ほぉ?悪魔がどの口で言ってるんだ。」
そうして腕が緩められ、なんとか脱出できる幅ができる。ようやく手を離れると、シンの元へと急いで近づく。すっと闇を纏って、それから、普段のシンになる。
「シン?」
「ごめん、一緒に会議に連れていけばよかった。僕の判断ミスだ。」
「…ううん、君が、こうして助けにきてくれただけでもうれし…」
「うっ…!」
シンが背中を先生に向けていたからだろうか。先生がシンに攻撃を仕掛ける。
まともに食らってしまったシンは呻き声をあげて、でも僕をかばうように抱きしめる。その背中からは大量の血が流れている。
「シン、シン…!目を、開けてよ…!だれか、だれか…!助けて…!」
そうして、だれかが気がついたのか、バタバタと駆けつける音がする。
「シンちゅわん?!」
「大丈夫か?!」
そんな声を上げながらぞろぞろと6人ほど中に入ってくる。
「あの人を、天界に強制送還してもらえませんか。…僕はシンの治療にあたるんで。」
「…、約束は違えないな?」
「…もちろん。シンのことが大好きだから。」
「よっし、じゃ、いっちょふんじばってかえすか。」
そうして光の膜を急いで作り上げ、シンの背中へと意識を集中させる。たすかって、おねがい、しなないで、
「ルヰ、くん…?」
「大丈夫?!」
「…なんとか。ごめん、不甲斐なくって。」
「ううん、約束不履行の仁が悪いんだから。」
その傍ら、向こうも悪戦苦闘していて。
「こいつ、強いな…!」
「そろそろ行けるか?」
「よっし、行けそうだ…!」
そうして強制送還の術式が完成したらしく、急いで送還される。ふう、と全員がため息をついた。
「大丈夫か、シン。」
「…なんとか。ルヰくんが治療してくれなかったらもう少し危なかったかも。」
「で、噂の天使の恋人ちゃん?」
「はい?」
「本当に、本当にシンちゅわんのことが好きなの?」
「もちろん。…一目惚れ、して、ここにきて。優しくしてもらって。僕も離れたくない。」
「ならいいんだけどさ。」
「今日の議題は、とりあえず終わりましたね〜。ま、シンくんが聞かれたくないのはなんとなくわかりましたけどね。」
「…へ?」
「うぅ…、」
そうして顔を真っ赤に染めるシン。
「まって、今日の会議って、」
「…みんなに、ルヰくんのことも、守ってもらえないか…、相談の会議でした…。遅かったけど…。」
「あー…、」
「ま、お互いのことが好きなのが分かったし、これならばっていうのが見えたよね。」
「ま、彼もそれなりに力がありそうだけど。」
「でも!ルヰくんは僕が守りたいの!」
「とか言いながら敵に背中を向けて…、何やってるんだ…。」
「面目ない…。うぅ…。」
そうしてその場に笑いが起きる。
いろいろあったけれど、なんとか結束を強められたようだった。
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シンside
「だから!僕も彼のことが好きだって言ってるじゃない…!」
「だからと言えどずっと天使を家に連れ込んで説明もなしに守ってくれと言われても、こっちも困っちゃうというか?」
「うっ…、だめ…?」
「上目遣いされても…流石に…ですよ?シンくん。」
「ああああレオくんまで…!」
「ていうか、姿も見たことないのに守ってくれって言われても誰を守れってんだよ…」
「うー…、ユウくん…。」
「一回頭を冷やそうか、シン。」
「うぅ…。ユキノジョウさんまで…。」
そうして、会議は平行線をたどったまま、一回休憩に入る。
ルヰくんに会いに行こう…なんて思いつつ部屋に向かってる途中だった。
『だから、そのような世迷言をあなたは信じてるのですか?」』
『…ここ数ヶ月彼と過ごしていて、きっちり愛をもらってます。それが嘘であるなんて、そんなはずはない…!』
そうして中からぱちん、という音が聞こえる。
『さぁ、わかったら帰りますよ。』
『い、やだ…!』
『なに?』
そうして、ガチャ、と音を立てて中に入ると、知らない天使がそこにいた。
「ふんっ、こんな奴と生活をしていたんですか。まぁいい、倒して差し上げましょう。」
「…かえして、かえしてよ。僕の、大切な、恋人を…!」
そうして顔を歪めて、目を赤く光らせる。怒りのままに相棒の鎌を呼び出して、構えをとる。ただ、ルヰくんが囚われているのが分かっているので、それ以上のアクションは取れない。
「はなして…!はなして…!せっかく見つからないように逃げたのに…!なんで、なんで見つけるの?!」
「ルヰくんを、かえせ…!その汚い手を離せ…!」
「汚いのは君という悪魔の方では?はんっ、そんなことも分からないとは…、流石と言ったところでしょうか。」
「っるさい!ああああああああっ!」
そうして僕の周りに急激に闇を集める。それがはれたとき、いつもと違う、本当に「悪魔」と言うべきモノへと変化する。
「ルヰくんに、この姿は見せたくなかったけど、仕方が無いよね。…そこの天使を殺さないと気が済まない。」
「シン…!せめて、せめて強制送還くらいに…!」
「…、ルヰくん。じゃあ、そいつがルヰくんを解放してくれるなら考えるよ。」
「ふんっ、ルヰの言葉には聞く耳を持つと。」
「本当はあんたを滅多打ちにしないと気が済まないけどね。嫌われたくないし。」
「ほぉ?悪魔がどの口で言ってるんだ。」
そうして腕が緩められ、なんとか脱出できる幅ができる。ようやく手を離れると、ルヰくんが僕の元へと急いで近づく。すっと闇を纏って、それから、普段の彼に対している僕になる。
「シン?」
「ごめん、一緒に会議に連れていけばよかった。僕の判断ミスだ。」
「…ううん、君が、こうして助けにきてくれただけでもうれし…」
「うっ…!」
僕が背中を不注意に向けていたからだろうか。相手が僕に攻撃を仕掛ける。
まともに食らってしまった僕は呻き声をあげて、でもルヰくんをかばうように抱きしめる。あぁ、とても、とてもいたい、ルヰくんは、ぶじ、なの…?
「シン、シン…!目を、開けてよ…!だれか、だれか…!助けて…!」
そうして、だれかが気がついたのか、バタバタと駆けつける音がする。
「シンちゅわん?!」
「大丈夫か?!」
あぁ、みんなのこえが、する、大丈夫、これで、まもってもらえる、
「あの人を、天界に強制送還してもらえませんか。…僕はシンの治療にあたるんで。」
「…、約束は違えないな?」
「…もちろん。シンのことが大好きだから。」
「よっし、じゃ、いっちょふんじばってかえすか。」
そうして暖かな光をかんじる。そしてルヰくんの気持ちがながれこんでくるのがわかる。たすかって、おねがい、しなないで、…あぁ、僕は彼に愛されている…!
「ルヰ、くん…?」
「大丈夫?!」
「…なんとか。ごめん、不甲斐なくって。」
「ううん、約束不履行の仁が悪いんだから。」
それを聞きつつ、現状を把握すると、みんなは悪戦苦闘していて。
「こいつ、強いな…!」
「そろそろ行けるか?」
「よっし、行けそうだ…!」
そうして強制送還の術式が完成したらしく、急いで送還される。ふう、と全員がため息をついた。
「大丈夫か、シン。」
「…なんとか。ルヰくんが治療してくれなかったらもう少し危なかったかも。」
「で、噂の天使の恋人ちゃん?」
「はい?」
「本当に、本当にシンちゅわんのことが好きなの?」
「もちろん。…一目惚れ、して、ここにきて。優しくしてもらって。僕も離れたくない。」
「ならいいんだけどさ。」
「今日の議題は、とりあえず終わりましたね〜。ま、シンくんが聞かれたくないのはなんとなくわかりましたけどね。」
「…へ?」
「うぅ…、」
そうして顔を真っ赤に染める。だって、だって…!
「まって、今日の会議って、」
「…みんなに、ルヰくんのことも、守ってもらえないか…、相談の会議でした…。遅かったけど…。」
「あー…、」
「ま、お互いのことが好きなのが分かったし、これならばっていうのが見えたよね。」
「ま、彼もそれなりに力がありそうだけど。」
「でも!ルヰくんは僕が守りたいの!」
「とか言いながら敵に背中を向けて…、何やってるんだ…。」
「面目ない…。うぅ…。」
そうしてその場に笑いが起きる。
いろいろあったけれど、なんとかみんなに同意を得られたみたいだった。