うららかたいむ。
ルヰside
「んー、今日もいい天気…!」
そう言って窓を開けると、優しい陽の光。
伸びをして、朝ごはんを食べて。それからいつも通りお出掛けをする。鼻歌を歌いながら、昼過ぎに家に帰ってきた時だった。
「ルヰっ…!逃げろ…!」
「え?」
「悪魔だ、悪魔が来たぞ…!」
「な、」
そう目の前の言われて反射的に身震いをする。
そしたらその相手が、目の前で、首から血飛沫をあげて、
「っあ、や、ひっ…!」
そうして反射的に元来た道を駆け出す。
後ろを振り向くと、ゆらり、と付いてくる影が1つ。さっきの悪魔だ。
そんなこんなで目の前に行き止まり、しかも大きな木のしたまでやって来てしまう。
「ぁ、こんなところで、ひぃ…!」
木に背をつけて、それからあまりの怖さにしゃがんでしまう。相手の悪魔は僕と同じくらい見た目は若く、それでありながらギラギラとした赤い目を光らせていた。
「…ふふ、こんな美味しそうな天使が…1人…、みぃつけた。」
「ひっ…!」
その悪魔は首をこてん、と傾げながら僕をその赤い目で見つめて、それから手元に鎌を喚び出して僕を狙う。
「僕のために、死んで、ね?」
「い、や…、やめ、て…!」
「ふふ、だぁめ。」
そうしてここで死んでしまうのか、と悲しくなって大粒の涙を流し、項垂れながら死を覚悟した。が、しばらくして、その死が訪れないことに疑問を覚えて頭をあげる。
近くまでその悪魔が接近していて、ひっ、と悲鳴をあげると、わざわざ喚び出した鎌をしまい、それから僕の髪をさらり、と触ってから濡れた僕の頬に手を滑らせて口を開けた。
「すごく、綺麗だ…。ふふ、ひとめぼれ、しちゃった。」
「え?」
「君は殺さないでおいてあげる。…また、こっちに来た時にでも会ってよ。」
「…、まって!」
彼のひとめぼれしちゃった、の時の笑顔が、くしゃっとした笑い方で、そしてとても照れていて、悪魔とは思えないくらい可愛いくて、だから。
「僕も、君の笑顔、好き、だな。」
「え?」
「…ここでさ、僕だけ死んでないの、おかしいでしょ?それに、何度もこっちで会うのはリスクが高すぎる。…ねぇ、」
「えっと、なに?」
「僕をさらって?」
「なにを言って、」
そうして戸惑う彼をよそに、勝手に自己紹介をする。
「僕の名前はルヰ。…君の名前は?」
「僕の名前はシン、シンだよ?」
「シン…、ふふ、いい響き…。ね、シン。僕をさらって?」
「…、君は、それでいいのかい?」
「もちろん。…一緒にいたいって、思ったから。」
「わかった。…じゃあ、おいでよ。こっちに。」
「うんっ…!」
そうして、シンが優しく手を差し伸べてくれる。その手を掴み立ち上がり、それから大切そうに抱きしめられ目をつぶる。目を開けた時には、彼の、恐らくは住まいにたどり着いていた。そしてはにかみながら告げる。
「えへへ。ようこそ、ルヰくん。生きて天使がここに来たのって初めてじゃないかなぁ…。えへ、僕の、僕の最愛の天使…。ここが今日から君の家だよ…?大丈夫、殺させなんて、しないから。」
「…うん、シン。僕の、一目惚れした悪魔…、種族なんて、愛の前には関係ないよね…?」
そうして笑い合い、彼の胸の中へと吸い込まれるように収まる。
荒い息が聞こえる。けれど一向に捕食される気配はない。…間違ってなかった、僕の一目惚れした相手は、間違いなく僕を愛してくれる…!それだけで幸せな気分に浸れるのだった。
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シンside
そっと降り立った天界はいつもどおり明るくて目が痛い。
目を細めながら今回のターゲットの家へと近づく。
家の中へとそっと忍び込むと、1、2、3…、
「聞いた話と違う。ひとり足りない。」
そうして目の前に僕に気がついた天使がひとり。
「あはっ…、みぃつけた。僕の、僕の食料になってよ。」
「ひっ…!悪魔、悪魔だ…!!!!!」
そうして屋敷中で悲鳴が上がる。目の前の彼にゆらりと近づき、それから相棒の鎌を喚び出してサクッと1振り。
「新鮮な血だね、君。…ってもう聞こえてないか。…んっと。」
そうしてそっと腹を割いて臓物と、一部美味しそうな部位を上手く鎌を使って手に取り、それから持ってきた袋に入れる。
「ほかに二人、いたよね?」
そうしてもう1人はすぐに見つかる。
そいつにも鎌を振り上げて殺し、同じことをする。
玄関の方に一人向かってるみたいだ、そいつも、狩らなきゃ。そうして声が聞こえる。向かうとなにやらもう1人に忠告しているみたいだった。
「ルヰっ…!逃げろ…!」
「え?」
「悪魔だ、悪魔が来たぞ…!」
「な、」
そうして忠告したそいつを殺す。目の前で甘そうな天使が悲鳴を軽くあげる。
「っあ、や、ひっ…!」
そうして逃げていくのを眺めながらとりあえず先に袋にブツを詰め込む。
「んー、どうしたものかな。とりあえず追えばいいかな。」
そうして向かった方向を見ると、飛ぶ余裕すらないのか、走って逃げているのが見える。
「ふふ、すぐに追いついてあげるよ…。」
そんなことを呟きながらそっと羽根を開き、美味しそうな天使を追いかける。
追いかけていたらいつの間に行き止まりまで来ていて、それから目の前の天使はそこにある大きな木に背をつけて腰を抜かす。
「…ふふ、こんな美味しそうな天使が…1人…、みぃつけた。」
「ひっ…!」
「僕のために、死んで、ね?」
「い、や…、やめ、て…!」
「ふふ、だぁめ。」
そして首をこてん、と傾げながら鎌を喚び出す。そうして振り上げた時だった。
目の前の天使は大粒の涙をぽろり、と目から溢れさせて、それから下を向く。すごく、
「すごく、綺麗だ…。ふふ、ひとめぼれ、しちゃった。」
「え?」
「君は殺さないでおいてあげる。…また、こっちに来た時にでも会ってよ。」
「…、まって!」
笑顔を作り、そう告げる。それから踵を返し、綺麗だから見逃してやろうとしたところ呼び止められる。
「僕も、君の笑顔、好き、だな。」
「え?」
「…ここでさ、僕だけ死んでないの、おかしいでしょ?それに、何度もこっちで会うのはリスクが高すぎる。…ねぇ、」
「えっと、なに?」
「僕をさらって?」
「なにを言って、」
そんなことを言う天使がいるなんて思ってもみなかった。頭が混乱する。その中で彼が口を開く。
「僕の名前はルヰ。…君の名前は?」
「僕の名前はシン、シンだよ?」
「シン…、ふふ、いい響き…。ね、シン。僕をさらって?」
「…、君は、それでいいのかい?」
「もちろん。…一緒にいたいって、思ったから。」
「わかった。…じゃあ、おいでよ。こっちに。」
「うんっ…!」
すこし戸惑ったけれど、彼自身が来ると言っている。ならば、と手を差し出し、彼を立ち上がらせると、頬を染めて抱きついてきて、それから目を閉じてくれる。
そうして僕の住んでいる所領へとそっと僕らを転移させる。あまりの彼の従順さに嬉しくなって腕を広げ、はにかみながら告げる。
「えへへ。ようこそ、ルヰくん。生きて天使がここに来たのって初めてじゃないかなぁ…。えへ、僕の、僕の最愛の天使…。ここが今日から君の家だよ…?大丈夫、殺させなんて、しないから。」
「…うん、シン。僕の、一目惚れした悪魔…、種族なんて、愛の前には関係ないよね…?」
そうして笑い合い、彼が僕の胸の中へと抱きついてくる。
つい息が荒くなる。そりゃそうだ、こんなに美味しそうな天使が僕の腕の中にいる。だけど、つい、一目惚れして攫ってきた相手だ。捕食なんて到底できない。そして、美味しそうな、でも、絶対に食べてはならない、そんな愛しい天使と僕はそんなこんなで同居することになったのだった。